2005年08月31日

キス・オブ・ライフ

003年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式招待作品。
人間が突然、死を迎えた時という内容の映画は沢山あるが、これもまた、死を迎えた時、自分の周りの愛する人達への思いの強さというのを表現している映画だなと感じた。
実際、この映画で死んだ主人公のヘレンは自分自身、死んだという状況を受け入れる事が出来ずに魂が現世に残っていく。
子供と言うのはなんて敏感なのだろう。彼女の魂の気配を感じて、色々な動きを見せる。
しかし、人間は実際に死を目の当たりにするまで、極めて日常的な当たり前の事がどんなに大切なのかと言う事を気づかないでいる事が非常に多い。その意味でこの映画はとても意義のあるものだと思う。
それを、我々に再認識させてくれるから。
でも、この映画は、この非日常的な「死」と言うのは実は家族のどのメンバーにも目の前にぶら下がっている物なのだ。映画の始めの方で家族の普通の生活を営んでいるシーンがあるが、何気ないシーンなので
見過ごしがちであるが、実はこの映画全体のトーンを決めていると言っていいと思う。ここでも、既に各メンバーが自分達自身が死と隣り合わせにいる事をさりげなく描いているのだが、皆、誰も気づいていない。
ここで言う各メンバーが「死」が目の前にぶら下がっていると言うのは家族5人のうち、主人公である母の存在は「死」を実際に迎え、祖父は人間には必ずしも逃れられない老化による「死」、夫は危険な地帯に仕事で出かけていて常に「死」と
隣り合わせ。子供達2人のうち、特に下の男の子は実際に母の死の現場を見てしまう。でも、こんなに「死」がこの家族を、現実の我々を取り巻いていても普段は何も考えない所が怖いところである。
家族、今、日本では崩壊の危機にあると言われているが、その絆の深さ、一番、会いたい人一番大切な人に、いざと言うときに誰に最後のキスを送りたいのかと言う事を実際の死を以って描いていると思う。
これは、一昨年、日本で公開された「死ぬまでにしたい10のこと」と何となく繋がりを感じる。最もこの作品は主人公は「死」を見据えて自分の大切な事を整理し行っていくことだが、「キス・オブ・ライフ」は「実際に死んでから自分に
遣り残した物を感じて魂は現世に残り、それが果たされるまで存在するというアプローチの違いはあるが。

主人公のヘレンは自分の父親と子供2人とロンドンに住んでいる。夫のジョンは東欧の戦争状態の激しい地域に派遣され救援活動の仕事についていて普段は家にいない。その日もいつもと同じ様に事は進んでいくはずだった。
しばらく家族の元に帰って来ないジョンの事をヘレンは考え、今までも約束していても帰って来ない夫だったが今度こそ、夫の帰りを待っていた。連絡しても今回も何やら難しい様子。なぜそれにとらわれるかと言うと今週末は彼女の誕生日であった。
しばらく会っていない夫。家族間の繋がりが何となくチグハグになっていくのを恐れているヘレンにしてみれば自分の誕生日と言う事以上に家族間の繋がりをしっくり生かせるためにも彼の帰り、存在は必要と感じていた。
何かを感じたのか、ジョンは「仕事が自分を必要としている!」と言って電話を切るのだが、心の中に何か不安を感じたのだろう。突然、帰ると言い出して帰国の途に着いた。しかし、ここは危険地帯。途中まで国連のスタッフが付いてくれたが
その後はどうなるかわからない。この後、彼は、さまざまな事件に遭遇するのだ。これから彼に起こる事件と家族に起こる事件の関連性、死と隣り合わせの恐怖を描くのに、ヘレンの視点と交互するように描かれていて少しわかりにくいかもしれないが
いつもの朝、ヘレンは娘のボーイフレンドの事で色々と悩み、また、父親はコーヒー1つ満足に入れられない。息子のテリーを学校まで送り、いつもの様に帰ろうとしていた。所がこの日に限って息子のテリーは母親の姿が消えると同時に学校に入らず
その辺りをぶらぶらしている。ヘレンは自分が今どうしていいのかわからない悩みの真っ只中。家庭内の出来事の全てが自分に覆い被さってきている様な感覚。ジョンと一緒に写っている写真を眺めながらヘレンは道路に立ち尽くす。その瞬間
ヘレンは車に跳ねられて重態。その瞬間を見た息子のテリーは心の中に刻み込まれ、その重圧からずーっと逃れられなくなる。つまり、その瞬間を見た後、そのままにしてしまい逃げてしまったからだ。小さいながらも罪悪感に駆られるテリー。
病院に運ばれ、死を家族に告げられる。子供達の祖父であるヘレンの父親はその事をジョンに告げようとしたが、一方、ジョンも危険地帯の中で、大変な思いをしていた。携帯は取り上げられ、ジョンはヘレンの死を知らない。ここからがジョンの
苦難の旅の始まりだった。
ヘレンは目覚める。しかし、それは死後の世界。魂だけが現世にいるのだ。自分自身も何が起きているのかわからない。ジョンの姿を見かけたり、また、暗く沈んでいる家族を見てなぜなのかを考えたり。
これ以降は話がとても複雑で、ヘレンの家族に対する愛情とジョンに会いたいという情熱の為に魂が色々な所に飛んでいく。一方ジョンも、夢の中でヘレンと会い、自分自身の意識もトリップしたりする。しかし、そんな出来事の中で、ヘレンの魂は何とか家族間の繋がり
を持とうというシーンが沢山出てくる。上の娘ケイトと髪を結んであげるシーン。夢に悩ませられている息子のテリーに優しい言葉をかけてやるヘレン。ここで、今まで上手くいかなかった家族生活を埋め合わせするかの様な感じだ。
そして、家で問題が起きた。蛇口が壊れ、水が出しっぱなし。家中水浸しだ。家族総出で掃除をした。そして、全てを元に帰すように…。全てを洗い流すように。
苦労に苦労を重ねて、ジョンがロンドンの家に帰ってくる。ヘレンとジョンは玄関で最愛で最後のキスをする。そして、今まで言えなかった言葉を互いに交わすのである。
そして、ヘレンの魂は安らかになっていくのだった。

この映画の家族を思いやる気持ち。誰を待っていたのか、何をしたかったのか、これを探るのがテーマなのだが、魂のトリップの仕方と、家族各人の夢の様子がリアルなんだけれども、入り乱れて
少し、わかりにくい部分があるかも知れないが、人間の愛の深さを再認識するには良い映画だと思う。
posted by diane at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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