2005年08月31日

レオポルド・ブルームへの手紙

この映画の原題は「Leo」。だからといって決してあの有名な人気俳優の事ではありません。タイトルの人物名を短縮したもののようです。
最初から最後までこの映画を見た時に映画全体の秘密がわかるのですが、愛情に欠けた人達に勇気を与える人間愛をテーマにした作品と感じました。
実は、この作品は、有名なアイルランドの作家、ジェームズ・ジョイスの長編小説「ユリシーズ」を元に製作されていると聞きましたが、実は私自身は「ユリシーズ」を読んでいません。
以前に読もうとしたのですが、あまりの長さに閉口して読むのをあきらめてしまったというのが実態です。
ジェームズ・ジョイスと言えば英文学の分野で言えば「STREAM OF CONSCIOUSNESS」という考えの流行が20世紀初頭にあり、彼はその先端を行った作家と聞いています。そのためか、映画の作り自身も時系列的というより、時間と時間が交差するどちらかといえば次元的な作品となっています。
あまり、「ユリシーズ」を知らない私が言うのも変ですが、唯一、この作品について触れている部分が映画の中にはありました。それは、少年の母親がなぜその少年に「レオポルド」と言う名前を付けたのかと言う事を言う時にこの作品の名前が出てきます。
どちらにしても数奇な運命に翻弄され続けたレオポルドと彼を精神的に支え続けた囚人のスティーヴンとの繋がりがこの作品の見所と言うのと、作品の最初にエンディングを暗示するような伏線があるのですが、そのエンディングを知った時に初めてこの映画全体の流れが理解できるという壮大な作りになっていて、これがまさしく「ユリシーズ」が書かれた時に流行った「STREAM OF CONSCIOUSNESS」の発想なのかなと思いました。
出演は数年前に「恋に落ちたシェークスピア」で名演したジョゼフ・ファインズ。そして、少年の母親役にかつてアカデミー主演女優賞ノミネートとなったエリザベス・シュー。脇には重鎮のデニス・ホッパーや少年役には11歳とは思えない子役のデイヴィス・スウェット。
そして、時々、折に触れて出で来るとてもミシシッピー美しい景色はストーリーが激しい分、心を和ませてくれます。とにかく実力派ぞろいの名作と言って良いでしょう。この作品が、ミニシアター系公開なのが少々残念です。
ある日、ミシシッピー州の刑務所から15年の服役を終えてある男が出所してきた。まだ、出たばかりなので保護観察の身だが、若いのに15年という長い服役期間であった。彼の名はスティーヴン。本当は別の名前らしかったが、違う自分になりたいらしく、名を変えた。彼は物静かで余りにも無口。その為、周りの人からは口が利けないのではないかと思われたほどだった。
彼は、街のレストラン、ヴィックスで働き出す。彼は保護監察官から来る早々、怪しい事はするなと釘を刺されている。しかし、そんな彼にも仕事仲間ができた。同じくそのレストランで働く仲間たちだ。しかし、彼の心を本当に和ますのはレオポルド・ブルームという少年に手紙を書く事だった。彼は学校の課題で囚人に手紙を書くと言うのがあった。その中で「僕の人生は僕が生まれる前に始まった。僕は母さんの罪の烙印」と書いた。レオポルドはスティーヴンに熱心に手紙を書き続ける。彼は上記で書いた様に母親に愛される事も無く疎まれるだけで育ち、本を読むのが好きな少年だった。そんな彼は囚人のスティーヴンに手紙を書く事が楽しみだった。
なぜ、レオポルドは母親にそれほどまでに疎まれ、愛される事もなかったのか。母親のメアリーは大学教授の夫と娘の三人で幸せな毎日を送っていたが、夫の同僚の妻からの密告をきっかけに
夫を信じられなくなっていった。酒におぼれる毎日。夫の浮気を疑う毎日。そんな生活を送っていた時に、家の改修工事に来ていたペンキ職人と関係を持ってしまう。そうこうしている内に彼女は妊娠するのだった。夫は自分の潔白を晴らし、さらにしばらく出張することを彼女に告げる。彼女は出産の兆しを感じた。買い物を夫に頼み、娘と雨の中車で出かける夫。そこで、夫と娘は事故で死亡。彼女は肺の機能が未発達だが男の子を出産。目が覚めて事実を知った時、彼女は錯乱し、夫と娘が死んだのは自分のせいだと自分を責め立てる。そして、生まれた子供は、関係を持ったペンキ職人との間の子供ではないかと…。
一方、スティーヴンは、毎晩、部屋の電気が付いている事を周りの連中に怪しまれていた。彼は刑務所時代からレオポルドに手紙を書き続けている事、折を見て彼に会いに行く事などを話した。
生まれた子供はレオポルドと名づけられた。それは学生時代彼女がよく読んだ「ユリシーズ」に出てくる人物名だからという事だが…。(何しろ私は読んでいない)母親はレオポルドを愛せないでいた。未だに夫と娘が死んだのは自分のせいだと思い込んでいたからだった。しかもペンキ職人との関係は続いている。酒飲みの上に暴力を振るう。レオポルドは内向的な人間になっていった。友達もなく、本が唯一の友達。しかし、一度だけ、母親の目を盗んで野球を近所の子達とした。それが彼にとっては楽しい出来事だった。その姿を陰ながら見ていたスティーヴン。
ある日、スティーヴンの職場の女性が虐待にあっていた。それを助けたスティーヴン。助けた理由は勇気。助ける勇気を得るのに長い時間がかかった。
ここで、この話の一番のトリックが明かされるのだ。なぜスティーヴンは犯罪者の様には見えないのに15年もの服役しなければならなかったのか。これは映画を実際に見て知ってほしい部分だ。
ある日、相変わらずペンキ職人はレオポルドの母親に暴力を加えていた。大きくなったレオポルドは母親を救うため思わず、フライパンでペンキ職人を殺してしまう。当然第一級殺人罪だ。
しかし、そこに至る経緯があるので情状酌量の余地は十分あった。レオポルドは弁解もしなかった。一方、母親は、レオポルドはペンキ職人の子だと思い込んでいたが実はペンキ職人は無精子症で子供はできないのであった。レオポルドは正真正銘夫婦の子であった。陪臣もそこにいた人々も母親に対して非難の目を向ける。そこでレオポルドが弁解をすれば彼は減刑される。しかし、しないでそのまま罪を受け入れた。別な言い方をすればそれが母親に対する彼の復讐だったのだろう。刑務所に面会に来る母親。謝罪をしてもレオポルドはもう来ないでくれというだけだった。
部屋に閉じ篭り相変わらず手紙を書き続けるスティーヴン。それは本当は一体誰への手紙だったのか?
そんな時に店で事件が起きた。そっと回りも彼に気を使い、店を抜け出し思い切りミシシッピ川へ向かって走るスティーヴン。胸が苦しくなってきた。そこに現れるレオポルド。
その二人の対話は、スティーヴンの心の苦しみを開放するものだった。ようやく彼は見つけたのだ。新しい人生を…。

舞台がかなり入れ替わるのでわかりにくかったりする部分も多少あるがこの映画の最後のシーンは素晴らしかったです。それと最後の最後まで隠していたこの映画のトリック。これがわかる場面も感動的です。是非、美しい景色、本当の人間の心の触れ合いをこの作品を通して知ってもらいたい。そう思わせる作品でした。

posted by diane at 22:00| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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レオポルド・ブルームへの手紙
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Tracked: 2006-02-24 01:12

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